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2025/07/26

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M&Aのリスクを軽減!木村会計事務所が解説「中小企業事業再編投資損失準備金」制度

中小企業のM&Aを後押し!「事業再編投資損失準備金」制度とは

M&A(合併・買収)に興味はあるものの、投資のリスクが気になる中小企業の経営者の皆様へ朗報です。国は、中小企業が積極的にM&Aに取り組めるよう、「中小企業事業再編投資損失準備金」という強力な制度を設けています。

この制度を活用することで、M&Aに伴う将来の投資損失に備えることが可能です。木村会計事務所でも顧問先様から多くのご相談をいただいております。今回は、この注目の制度について、その概要から手続き、そして注意点まで詳しく解説します。

制度の概要:税負担を軽減しM&Aを促進

中小企業事業再編投資損失準備金制度は、中小企業がM&Aを行う際に、一定の要件を満たす株式等の取得費用の一部を準備金として積み立て、損金算入できる制度です。

損金算入とは、会社の利益から差し引くことができる費用のことであり、この制度を利用することで、税負担を軽減しながら、将来の投資損失に備えることができます。これにより、中小企業は事業承継やM&A、事業統合など、将来の成長に向けた大胆な投資に、より積極的に挑戦しやすくなります。

制度のポイント:対象となるM&Aと準備金の積立・取崩し

中小企業事業再編投資損失準備金制度の主なポイントは以下の通りです。

対象となるM&A

令和9年3月31日までに、事業承継等事前調査(デュー・デリジェンスの内容)に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受けた中小企業者が、株式取得によってM&Aを実施する場合(取得価額10億円以下に限る)が対象です。

準備金の積立限度額

買手企業は、株式等の取得対価の70%以下の金額を準備金として積み立て、損金算入できます。

準備金の取崩し

減損や株式売却等を行った場合は準備金を取り崩し、取崩額を益金算入します。また、据置期間である5年経過後は、残りの準備金を以後5年間で均等に取り崩し、益金算入します。

対象となる中小企業の要件

本税制の適用を受けるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 特定事業者等であること(中小企業等経営強化法)
    • 常時使用する従業員数が2,000人以下の法人または個人
    • 協同組合等
  2. 中小企業者であること(租税特別措置法)
    • 資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人
    • 資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人

※ただし、大企業の子会社等に該当する場合は対象外となる等の要件があります。

対象となる行為類型:株式取得を伴う事業承継

本制度の対象となるのは、他の特定事業者等の株式等を取得するもので、事業の承継を伴うものに限られます。事業譲渡や合併などは、準備金の積立の対象外です。また、同一の者に支配された法人間での事業の移転や親族内での株式移転も対象外となります。

事業承継等事前調査(デュー・デリジェンス)の重要性

事業承継等事前調査(デュー・デリジェンス)とは、M&Aによる買手側が、売手側に対して、法務、財務、税務等の観点から経営資源について損害が生じるおそれがないか調査を行うことです。

計画認定にあたっては、十分な事前調査を実施する予定かどうかを確認するため、「事業承継等事前調査チェックシート」の提出が求められます。

手続きの流れ:認定から税務申告まで

制度を活用するための手続きは以下の通りです。

  1. 経営力向上計画の策定・申請:M&Aの相手方が決まったタイミング(基本合意後など)で、株式取得を含み、かつ事業承継等事前調査の内容を記載した経営力向上計画を策定・申請し、主務大臣の認定を受けます。
  2. 事業承継等の報告と確認書の交付:認定計画に基づき株式取得を実行した後、主務大臣に事業承継等を実施したこと等を報告し、確認書の交付を受けます。
  3. 税務申告:税法上の要件を満たす場合に、税務申告において準備金積立額を損金算入します。税務申告時には、「中小企業事業再編投資損失準備金の損金算入に関する明細書(法人税申告書別表12(2))」のほか、上記①の申請書、①の認定書、②の確認書(いずれも写し)を添付します。

計画認定に係る運用改善:M&Aプロセスを円滑に

令和6年度税制改正において、中小企業のM&Aの実態を踏まえ、経営力向上計画の認定手続きにおける運用が改善されました。具体的には、経営力向上計画の認定前に事業承継等事前調査(デュー・デリジェンス)を実施することが可能となりました。これにより、M&Aのプロセスをより円滑に進めることが期待できます。

木村会計事務所がM&Aと事業承継をサポート

中小企業事業再編投資損失準備金制度は、中小企業がリスクを抑えながら、積極的にM&Aに取り組むための強力な味方となります。この制度を賢く活用することで、事業の成長や承継を円滑に進め、未来への新たな一歩を踏み出すことができるでしょう。

書類の作成や手続きが難しいと感じる方は、ぜひ木村会計事務所にご相談ください。税務に関する最新情報や、お客様の状況に応じた適切なアドバイスを提供し、御社のM&Aを強力にサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。