経営者がまず見るべき最重要指標:「今あるお金(現金)」のチェックリスト
「売上はあるのに、なぜかお金が残らない」という悩みは、利益と現金が別物だから起こります。帳簿上の利益より、実際に使える手元の現金や預金こそが、会社を倒産させないための最重要指標です。
現金・預金を把握する3つのステップ
まず、以下のステップで資金繰りの基礎を固めましょう。
- 残高の合計把握: 現金+普通預金の合計が「今使えるお金」です。帳簿残高と実際のお金が一致しているか確認しましょう。
- 増減の確認: 先月と比べて「お金が増えたのか、減ったのか」という変化に注目しましょう。
- 増減の理由考察: 増減の事実から、「なぜそうなったのか?」原因を逆算して考えましょう。原因を把握することで、経営の改善点が見えてきます。
現金は「売上の2ヵ月分」が目安
手元の現金・預金の合計は、売上の2ヵ月分を目安に確保することが推奨されます。これより少ないと、急な仕入れや予期せぬ出費に対応できず、資金繰りが苦しくなる恐れがあります。
会社の成績表を読解!売上・原価・経費・利益の関係性
会社の調子を把握するには、損益計算書(PL)の基本構造を押さえましょう。難しい会計知識は不要です。
項目 | 内容 | 意味合い |
売上 | 収入の総額 | いくら稼いだか |
原価 | 商品・サービスの直接コスト | 稼ぐために直接かかった費用 |
経費 | 会社運営のための費用 | お店を回すためのその他の費用 |
利益 | 売上 – 原価 – 経費 | どれだけ儲かったか |
この4つの数字を、前年同月や予算と「比較」することで、売上や経費の変化や波を読み解き、具体的な課題とチャンスを見つけられます。
経営を見える化!グラフで「異常」と「傾向」をキャッチする
数字が苦手な人ほど、グラフ化(見える化)が有効です。数字を直感的に理解し、違和感や傾向に早く気づく習慣をつけましょう。
異常に気づくチェックリスト
毎月の数字チェックで「あれ?」という違和感を見逃さないことが、ムダな出費やミスを防ぎます。
- 異常な増減: 交際費や消耗品費など、特定の経費が前月比で急増・急減していないか。
- 感覚とのズレ: 「このくらいの売上のはず」という感覚と実際の数字がズレていないか(請求漏れ、入力ミス、過剰在庫などのサイン)。
傾向を掴むグラフの活用
- 3期比較グラフ: 過去数年の売上や利益を比較し、成長や停滞の様子をひと目で確認。
- 移動年計グラフ: 直近12ヵ月分の合計を追うことで、季節的な短期のブレに惑わされず、売上の本当の流れを把握できます。
売上を「分解」して具体的な戦略を見つける
売上全体の数字だけでなく、「なぜその売上になったのか」を分解することが、成長のヒントになります。
売上分解の切り口
売上を「部門別」「顧客別」「商品別」「新規/既存」などで細かく分析し、売上が特定の顧客や商品に偏っていないか(リスク)、どの事業が特に稼いでいるか(強み)を見つけましょう。
単価と販売数の戦略
売上は「単価 × 販売数」で決まります。
- 単価を伸ばす戦略: 値上げ、高付加価値化、上位商品の開発。
- 販売数を伸ばす戦略: 顧客数増加、購入頻度向上、販路拡大。
木村会計事務所は、数字の裏側にある経営の課題を発見し、具体的な改善策をサポートします。
会社の「体力」を測る重要指標:BS・PLの活用
利益だけでは見えない会社の体力や資金繰りの安全性を、貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)の指標でチェックしましょう。
指標(PL) | 計算式 | 意味 |
粗利率 | (売上−原価)÷売上 | 商品・サービスでどれだけ効率よく儲けたか |
営業利益率 | 営業利益÷売上 | 本業でどれだけ効率よく儲けたか |
労働分配率 | 人件費÷粗利益 | 稼いだ利益のうち人件費が占める割合 |
これらの指標の推移をチェックすることで、「仕入れ単価が高騰していないか(粗利率)」「人件費が利益を圧迫していないか(労働分配率)」といった経営の効率性が把握できます。