12月は、個人事業主にとって1年を締めくくる大切な月です。売上や経費がほぼ固まり、節税対策ができる“最後のチャンス”でもあります。
さらに今年は、インボイス制度の本格運用が始まって初めての年末ということもあり、「請求書の処理」「経費の選別」「取引先との対応」など、例年以上に見直すポイントが多くなっています。
本コラムでは、
「インボイス制度」×「年内にできる節税戦略」
を軸に、個人事業主が今やるべき実務的な見直しポイントを詳しく解説します。
1. 年末はインボイス制度の“抜け漏れ”をチェックする絶好のタイミング
インボイス制度が始まったことで、
- 仕入れ先にインボイス登録番号があるか
- 自分が発行した請求書が制度要件を満たしているか
- 経費処理に使っているレシートに「適格請求書」が必要かどうか
など、確認すべき項目が増えました。
12月はレシート・請求書をまとめて見直す人が多く、このタイミングで整理しておくと翌年の確定申告が格段にラクになります。
特に以下は必ずチェックしておきましょう。
インボイス登録している取引先
インボイス登録番号がない仕入先からの支払いは、原則として仕入税額控除が制限されます。
(※ただし、2029年9月まで経過措置があり、一定割合は控除可能)
あなた自身の請求書の記載事項
- 登録番号
- 日付
- 取引内容(消費税率の区分含む)
- 税率ごとの金額
- 消費税額
が揃っているかを確認しましょう。
12月は請求ミスがもっとも多い
年末は業務が立て込み、請求書の誤記・発行漏れが増えます。
インボイス制度導入後は誤記訂正が煩雑になるため、月末締め前のチェックが重要です。
2. 節税の要:青色申告は“やらないと損する制度”に
個人事業主の節税といえば、最初に挙がるのが青色申告です。
青色申告はなぜ節税になる?
- 最大65万円の青色申告特別控除
- 赤字を3年間繰り越せる
- 家族への給与を必要経費にできる(青色事業専従者給与)
特にインボイス制度が始まり、帳簿の正確性がこれまで以上に求められるようになった今、青色申告は“実質的に必須”といえます。
12月にやっておくべき青色申告の準備
- レシート・請求書の整理
- 取引の未入力を残さない
- 期末の棚卸資産(在庫)を把握する
- 業務用とプライベートの支出を分けておく
青色申告は「帳簿をつけているかどうか」が基準なので、12月の整理が重要な意味を持ちます。
3. 必要経費の“入れ忘れ”は大きな損失に
年末は、1年間の経費を総点検するタイミングです。
特に個人事業主は「経費に入れ忘れていた支出」がよくあります。
忘れがちな必要経費の例
- サブスク(Canva, Adobe, ChatGPTなど)
- 仕事用スマホ・ネット代の按分
- 交通費・ガソリン代
- 打ち合わせ用の飲食代
- 書籍・オンラインセミナー
- 外注費(年末に支払ったが領収書がメールのまま…など)
インボイス制度との関係
2023年以降、
「領収書があればなんでも経費OK」ではなくなった
点に注意が必要です。
- インボイスの有無で、経費としての処理方法が変わる
- 経過措置中は控除割合の計算が必要
12月にまとめて整理しておけば、確定申告時に慌てることがなくなります。
4. 減価償却費を活用して“合法的に経費を前倒し”する
減価償却費は、10万円以上の備品を複数年に分けて費用化する制度です。
しかし、12月は以下のようなテクニックが使えます。
● 10万円未満なら即時経費
今年中に買えば今年の経費になります。
● 30万円未満なら「少額減価償却資産の特例」が使える
青色申告の事業者は、
1つ30万円未満の備品なら“即時経費化”できる
という大きなメリットがあります。(年間300万円まで)
例えば…
- パソコン(20〜25万円)
- カメラ(10〜30万円)
- タブレット
- 事務椅子・モニター
などは、12月に購入すれば今年の経費になります。
インボイスの影響は?
購入先がインボイス登録事業者かどうかで、消費税控除額が変わります。
大きな備品ほどインボイスの影響が出るため、購入前に確認必須です。
5. 【まとめ】12月は“節税とインボイス整理の最重要月”
個人事業主にとって、12月は次の3つを見直すことで節税効果が最大化します。
✅ インボイスの整理
領収書・請求書は要件を満たしているか?
✅ 青色申告の準備
帳簿の整理で65万円控除が確定する。
✅ 必要経費の見直し
経費漏れは利益が増える=税額が増える。
✅ 減価償却費の活用
10万円以上の備品は年内購入が節税チャンス。
もし
「うちの経費はどこまで入るのか?」
「インボイス制度で何が変わったのか?」
「12月のうちに何をすべきか具体的に知りたい」
という場合は、お気軽にご相談ください。
個人事業主に寄り添った実務目線で、最適な節税プランをご提案いたします。




