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2025/05/23

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雇用?外注?その線引き大丈夫?「偽装請負」で会社の未来を失わないために

【要注意】雇用から外注への安易な切り替えは危険信号!

「来月から社員じゃなくて外注でよろしく!」
会社側からの一方的な通告で、雇用契約から外注(一人親方)への変更を経験された方はいないでしょうか?

会社としては、労働時間の管理不要、労働保険や社会保険料の削減といったメリットを期待してのことかもしれません。しかし、これまでと何ら変わらない働き方であれば、その外注(一人親方)は法的に認められない可能性があります。

形式的に請負契約や委任契約を締結しても、実態が労働者と見なされれば、それは「偽装請負」となり、法律で禁止されている違法就労となります。

「偽装請負」が発覚した場合、会社は罰則を受けるだけでなく、建設業許可の取り消しにつながる可能性もあるため、非常に慎重な対応が求められます。

あなたの「外注(一人親方)」、実は「労働者」かも?具体例でチェック!

どのような場合に外注(一人親方)が労働者と見なされるのでしょうか? 具体的なケースを見ていきましょう。ある建設作業員が採用募集を見て面接を受け、〇〇建設会社と請負契約を締結しました。しかし、実際の働き方は次のようなものでした。

  • 〇〇建設会社と契約中に他社との請負契約ができなかった。
  • 〇〇建設会社からの勤務時間の指定はなかったものの、朝8時に事務所で仕事の指示を受け、夕方17時まで拘束され、それ以降の作業には手当が支給された。
  • 現場では依頼されていた工事以外の他の仕事も、時間が空いたら頼まれて対応していた。
  • 現場監督からの報告や指示により、〇〇建設会社から指揮監督を受けていた。
  • 作業道具は自身の所有物だったが、必要な資材等の調達はすべて〇〇建設会社が負担していた。

このようなケースでは、〇〇建設会社と実質的な「使用従属関係」があると認められ、請負契約ではなく「労働契約」であると認定されます。そうなれば、労災保険の適用を受けるだけでなく、社会保険の適用労働時間の管理など、通常の従業員と同じ取り扱いが必要になります。

「偽装請負」で労災事故発生!会社が負う重い代償とは?

労働者を雇い入れた場合、原則として10日以内に労働基準監督署へ届け出て労災保険の加入手続きを行わなければなりません。

もし、外注(一人親方)が労働者と認定された場合は、速やかに加入手続きを行う必要があります。

会社が労災保険の手続きを怠っていた場合、最大2年間さかのぼった労働保険料と10%の追徴金が徴収されます。

さらに、事業主が故意または重大な過失により労災保険の加入手続きを行わないまま労働災害が発生し、労災保険給付が行われることとなった場合、会社は以下の費用を徴収されることになります。

  • 労働保険料の徴収と追徴金
  • 労災保険給付額の100%または40%

労災保険の費用徴収 具体例

  • 故意と認定され100%徴収の場合: 労災事故発生前に労災保険の加入手続きを行うよう都道府県労働局から指導を受けていたにもかかわらず、指導後も手続きを行わなかった場合、「故意」と認定され保険給付額の100%が費用徴収されます。
  • 重大な過失と認定され40%徴収の場合: 労災事故発生前に指導はなかったものの、労災保険の適用事業となってから1年を経過しており、その後も手続きを行わない場合、「重大な過失」と認定され保険給付額の40%が費用徴収されます。

建設業許可のない一人親方への発注は法律違反!

雇用契約ではなく、外注(一人親方)として認められ、請負契約を締結する場合にも注意が必要です。

建設業の許可がない一人親方は、500万円未満の軽微な建設工事しか請け負うことができません(建築一式工事の場合は1,500万円未満または150㎡未満の木造住宅工事)。

500万円以上の工事を依頼する場合には、一人親方が建設業の許可を取得している必要があります。

元請け会社から材料の提供があった場合は、その費用も合算されるので注意しましょう。軽微な建設工事のみを営業とする場合を除き、建設業を営む者は元請・下請を問わず一般建設業の許可を受ける必要があります。

そのため、建設業の許可がない一人親方と下請契約を結ぶことは、建設業法違反(建設業法第28条第1項第6号)となります。

不正行為を行った場合は、指示処分や営業停止を命じられるケースもあります。一人親方に仕事を依頼する際は、建設業許可を取得しているか事前にきちんと確認することが非常に重要です。

まとめ:社会保険加入が必須の時代へ

2017年(平成29年)より国土交通省は、「偽装請負」是正のため、元請け会社に対し、社会保険に未加入の建設会社を下請先として選定しないよう要請しています。

特段の理由がない限り、適切な社会保険に加入していることを確認できない作業員の現場入場は認めない取り扱いがされています。

さらに、2020年(令和2年)10月からは、建設会社の社会保険の加入が建設業許可・更新の要件とされるなど、社会保険の加入確認が厳格化されています。

雇用と外注の線引き、労災保険や社会保険に関するご不明な点があれば、建設業に強い木村稔会計事務所にお気軽にお問い合わせください。無料相談も受け付けております。